ハイデッガー『存在と時間』「実存論的諸構造」”existenzialen Strukturen”について
第1回『存在と時間』実存論的諸構造」”existenzialen Strukturen”について
初めまして。ほてぃめんです。哲学の初心者ですが、ハイデッガーの『存在と時間』を読んでまとめるという事をしています。まずは正確に内容を理解する 事を努めています。
気になった語彙や、箇所について毎回テーマを絞ってまとめています。私自身もまだまだ追えきれてないのですが、何かご要望があればtwitterなどに連絡してください。よろしくお願いします。
目次
1.文法的解釈
2.該当箇所とその訳
3.まとめ・他概念との関連
4.考察・改善点
5.参考文献
はじめに。
今回はdie existenzialen Strukturenについてまとめていきます。
この単語は『存在と時間』§31の冒頭に初めて出てきます。それまでも”実存論的”や”構造”、”諸構造”についての言及はありますが、この一連のフレーズとして登場するのは初めてで、今回気になったので調べてみます。ただし、”die existenziale Struktur(単数)”については今回は扱いません(私の能力的な問題で)。また、間違っている点などは遠慮なく指摘してください。よろしくお願いします。
1.文法的解釈
1)構造理解
” die/der existenzialen Strukturen”
冠詞+形容詞+名詞(pl)
1)単語理解
・die/der
品詞:定冠詞
文法的解釈:f.nom/gen/dat/acc,pl.nom/gen/acc
・existenzialen
原形:existenzial
品詞:adj
元の単語:Existenz
意味:存在論的
文法的解釈:m.gen/dat/acc,f/n.gen/dat,pl.nom/gen/acc
・Strukturen
原形:die Struktur
品詞:名詞(pl)
元の単語:
意味:構造・構成・組織
文法的解釈:pl.nom/gen/dat/acc
2)構造理解
” die/der existenzialen Strukturen”
文法的解釈:pl.nom/gen/acc
3)直訳
実存論的諸構造・実存論的構造ども
2.該当箇所とその訳
注:
”existenzialen Strukturen”の含まれる一文を抜き出し訳しています。
ほぼ一文のため、当該箇所の始まりの部分だけ記しています。
引用文筆者訳、丸括弧内は筆者による補足です。
1, §31,S.142,Z.4,v.u.
・理解することとしての現存在
「情態性は実存論的諸構造の一つである、それ(諸構造)において「現」の存在が保たれる。情態性と等根源的にその(「現」の)存在を構成するのは理解することである。」
Befindlichkeit:情態性
Verstehen:理解すること
2, §34,S.166,Z.3,v.u.
・現の日常的存在と現存在の頽落
「世界-内-存在の開示性の実存論的諸構造へ遡ることにおいて、ある意味で解釈は現存在の日常性を見失っている」
3, §38,S.180,Z.8,
・頽落と被投性
「信仰や「世界観」がたほう、それらがあれやこれや述べる限り、またそれらが世界内存在として現存在について述べるなら、その述べられることどもが同時に抽象的な・概念上の理解にある要求することができるのだとしたら、既に際立たせられた実存論的諸構造へ戻らならなければならない。」
Verständnis:理解
この次のパラグラフで、”現存在に本質的に属している開示性の存在論的な構成(ontologische Konstitution)”というフレーズが出てくる。
4, §42,S.200,Z.5,
・現存在の前存在論的自己注釈から配慮として現存在の諸々の実存論的解釈の確証すること・裏付けること
「実存論的諸構造の、存在的にそれ自身に押し付けるような「空虚」や「普遍性」は、それらの特有な存在論的に規定されたあり方と豊さがある」
Sorge:配慮
Interpretation:解釈
Auslegung;注釈
Bewährung:確証すること・裏付けること・confirmation(英)この単語わかりづらい
Bestimmtheit:確実性
Fülle:豊富、たくさん、たっぷり、充実
現存在体制の統一という点に目が向けられる。Sorgeを通して相反する存在的なあり方を統一していく。
5, §69,S.351,Z.8,
・世界内存在の時間制と世界の超越の問題
「恍惚とした・脱自的時間性は、根本的に現を明るくする。これこそ(恍惚とした時間性・脱自的時間性)が 現存在のすべての本質的な実存論的諸構造の可能なまとまりを、第一義的に統制することである。 」
Reglativ:規制、統制
6, §72,S.376,Z.5,
・歴史の問題の実存論的-存在論的提示
「歴史性の実存論的構成は、
通俗的な諸存在理由に即してその定められた様々な手がかり、
と今までに獲得された実存論的諸構造によってあるガイド、
を持っている。」
3.まとめ・他概念との関連
1、情態性、理解することは実存論的諸構造の一部である。
2、世界-内-存在の開示性という性質のうち実存論的諸構造がある。
3、文脈的に”existenzialen Strukturen”のパラフレーズとして、現存在の開示性のうちで存在論的構成”ontologische Konstitution”が考えられる。
4、現存在体制の統一の話のうちだが、この箇所だけでは不明点が多い。
5、時間性(=統制的なもの)によって現存在の実存論的構造の統一が可能になる。
6、これだけではどのような関連性を持つか不明である。
・まとめ
実存論的諸構造は世界内存在の開示性のという性質のうちにあり、情態性や理解によって構成されている。そして現存在の時間性において諸構造が統一されることが可能となる。
4.考察・改善点
”existenzialen Strukturen”に関して考察を深めようとすると存在論的構成”ontologische Konstitution”についても考える必要が出てくるということがわかります。ハイデッガーはラテン語系とドイツ語系の同じ意味を持つ言葉を置換する形で使っているように見受けられるとことが多いので、特に”Struktur”と”Konstitution”の関係については調べてみたいです。また、今回は複数形の単語のみを抽出して議論を進めていったので、単数形の用語に関しても調べる必要はあると思います。
ただ、『存在と時間』の後半部分に関して自分なりの解釈がまだ足りていないので、しっかり一周できたらもう一度取り組みたいです。
5.参考文献
[テキスト]
Heidegger,M:Sein und Zeit, 19.Aufl.,Frankfurt a.M.:Max Niemeyer, 1927,(2006).
[訳]
ハイデガー『存在と時間(一),(二),(三),(四)』(熊野純彦訳)、岩波文庫、2013年。
―『存在と時間』(原祐訳)、中公バックス、1980年。
<後記>
初めてのブログですがよろしくお願いします。
ハードルがすごく高い(書籍入手という意味で)ブログになってしまいましたが、少しづつ読んでいきたいと思います。
一番最初に「実存論的諸構造」なんて難しい事をやるべきではなかったですね。反省してます。次回は不安について扱おうと思っていますが、おそらく数回に分けると思います。個人的な理解の目標は不安について自分なりに解釈ができるようになることです。なので現存在分析を中心に進めていきます。
まだまだわからないことが多いので、勉強していきます!
異論反論、意見等なんでもお待ちしています!
ほてぃめん